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諧和堂 ヘファダン と V narod運動 その2(修正・追記あり)

  • 2007/12/20(木) 00:00:00

V narod(ヴ・ナロード)運動が植民地下朝鮮半島でのハングル識字運動だということは知らなかったのですが、ヴ・ナロードという言葉自体は、聞いたことがありました

kyonsu_takuboku_8.jpg

石川啄木(1886~1912)が詠んだ、この歌…

◆はてしなき議論の後◆

われらの且つ読み、且つ議論を闘わすこと、
しかしてわれらの眼の輝けること、
五十年前の露西亜の青年に劣らず。
われらは何を為すべきかを議論す。
されど、誰一人、握りしめたる拳に卓をたたきて、
‘V NAROD!’と叫び出づるものなし。

われらはわれらの求むるものの何なるかを知る、
また、民衆の求むるものの何なるかを知る、
しかして、我等の何を為すべきかを知る。
実に五十年前の露西亜の青年よりも多く知れり。
されど、誰一人、握りしめたる拳に卓をたたきて、
‘V NAROD!’と叫び出づるものなし。

kyonsu_takuboku_3.jpg

此処にあつまれるものは皆青年なり、
常に世に新しきものを作り出す青年なり。
われらは老人の早く死に、しかしてわれらの遂に勝つべきを知る。
見よ、われらの眼の輝けるを、またその議論の激しきを。
されど、誰一人、握りしめたる拳に卓をたたきて、
‘V NAROD!’と叫び出づるものなし。

ああ蝋燭はすでに三度も取り代えられ、
飲料の茶碗には小さき羽虫の死骸浮び、
若き婦人の熱心に変りはなけれど、
その眼には、はてしなき議論の後の疲れあり。
されど、誰一人、握りしめたる拳に卓をたたきて、
‘V NAROD!’と叫び出づるものなし。

1911.6.15


kyonsu_takuboku_4.jpg

この歌で詠まれている「V NAROD」は「ヴ・ナロード」の語源になった、ロシアの学生運動をさしています。議論の場面は、ロシアの革命家クロポトキンの自伝「一革命家の思い出」に着想のヒントを得たといわれています。
クロポトキンは『京城スキャンダル』の中でも「ちらっ」とだけ登場します。
総督府に追われて、ミョンビンカンに逃げ込んだヨギョン@ハン・ジミンちゃんの着替えを促す場面…

kyonsu_takuboku_1.jpg
ソンジュ@ハン・ゴウン嬢が
ミシンがけをする
貴重なシーンでもあります


와우, 간만에 흥분 되네요
わう、すごく興奮したわよ
쫀 크로포드가 나오는 영화의 한 장면 같지 않아요?
クロポトが出る映画の一場面みたじゃないですか?

(第2話シーン33・ソンジュのセリフ)

しかし、クロポトキンが映画に出たという話は聞いたことがないんですが…。アナーキズムを題材にした映画のこと?でもそんな映画が植民地時代の朝鮮で上映されるはずはない?ソンジュ@ハン・ゴウン嬢はロシアで見たのかしら???

(071221修正・追記)
크로포드をてっきり「クロポト=クロポトキン」だと思っていたのですが。ポクギさんのご教示で「クロポド=クロフォード(ジョーン・クロフォード)」だということがわかりました。

 >ソンジュが言ったのは、「ジョーン・クロフォードが出てる映画の一場面みたいじゃない?」で、クローポトキンではないようです。女優 Joan Crawford (1904-1977)の1932年の作品「グランド・ホテル」か「雨」(原作サマセット・モーム)あたりじゃないでしょうか。

ご教示、ありがとうございました~! 

kyonsu_takuboku_6.jpg

脇道に逸れましたが…
啄木は「大逆事件(幸徳事件)」(1910年5月下旬、「明治天皇爆殺計画」があるとして、多くの社会主義者・無政府主義者が弾圧・逮捕、刑法73条(大逆罪)に問われ、幸徳秋水や管野スガ等12名が処刑された事件)に大きな思想的影響を受けているといわれています。

1911年2月6日付の書簡で啄木は…

自分の歩み込んだ一本路の前方に於て、先に歩いてゐた人達が突然火の中に飛び込んだのを遠くから目撃したやう

と、その心情を語っています。

kyonsu_takuboku_9.jpg

啄木が朝鮮併合について詠んだ有名な歌があります

地図の上に
朝鮮国にくろぐろと
墨をぬりつつ秋風を聴く

1910.9.9


kyonsu_takuboku_7.jpg

啄木は『京城スキャンダル』の主役たちよりも、一世代前の人物であり、ちょうどヨギョンが生まれた1912年に亡くなっています。
彼の感じていた植民地支配に対する矛盾と憤りは前述の歌にあらわれていますし、1909年10月にハルピン駅で伊藤博文を射殺した安重根(アン・ジュングン 안중근)に対しては、次の詩をささげています

雄々しくも
死を恐れざる人のこと
巷にあしき噂する日よ

1910.10.13

kyonsu_takuboku_2.jpg

少し後の時代の―ソンジュやクンドク、イノのような―
テロリズムも辞さない活動家に
彼が捧げた歌を最後に紹介しましょう…

kyonsu_takuboku_5.jpg

◆ココアのひと匙◆

われは知る、テロリストの
かなしき心を―

言葉とおこなひとを分ちがたき
ただひとつの心を、
奪はれたる言葉のかはりに
おこなひをもて語らむとする心を、
われとわがからだを敵に擲げつくる心を―

しかして、そは真面目にして熱心なる人の
常に有つかなしみなり。

はてしなき議論の後の
冷めたるココアのひと匙を啜りて、
そのうすにがき舌触りに、

われは知る、テロリストの
かなしき、かなしき心を。

1911.6.15

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石川啄木、それから

岩波文庫の「時代閉塞の現状・食うべき詩」に収載されていますが、啄木は、'V NAROD'SERIES A LETTER FROM PRISON という表題で、「あらゆる意味において重大なる事件の真相を暗示するもの」として、幸徳秋水の手紙を、EDITOR'S NOTES を付して紹介しようとします。解題によれば、1911年5月に、この手紙への注釈を中断し、6月15日の夜から17日にかけて、「はてしなき議論の後」、「ココアのひと匙」など6編の詩が一気に書き下されたとのこと。torakoさんが付した日付に彼の切迫した気持ちが感じられてなりません。
ところで、ソンジュが言ったのは、「ジョーン・クロフォードが出てる映画の一場面みたいじゃない?」で、クローポトキンではないようです。女優 Joan Crawford (1904-1977)の1932年の作品「グランド・ホテル」か「雨」(原作サマセット・モーム)あたりじゃないでしょうか。前者のパロデイが「THE 有頂天ホテル」だとか。
老いたロシア無政府主義者クローポトキンについては、トロツキーの「ロシア革命史」(岩波文庫、3分冊、pp.304-307)が真実を突いているのでは。
「自由主義の諸原理は、現実には警察体制と結びつく形でしか生きていない。無政府主義とは、自由主義から警察体制を追放する試みである。しかし、純粋な状態の酸素が呼吸に耐えがたいように、警察体制を一掃した自由主義の諸原理は社会の死を意味する。自由主義の戯画的な影として、無政府主義は全体的には自由主義と運命をともにしてきた。階級矛盾の発展は自由主義を殺すことで、無政府主義をも殺した。人間社会の現実の発展ではなく、人間社会の一特徴を不条理にまで導くことを自分の教義の基礎にしようとするいっさいの宗派がそうであるのと同じように、無政府主義は、社会矛盾が戦争や革命に達するその時点で、石鹸の泡のように破裂する。」
わお、重苦しい引用!

  • 投稿者: ポクギ
  • 2007/12/20(木) 23:37:23
  • [編集]

なるほど、クロフォード

ポクギさん、こんばんは。

あっちゃー!「クロポド=クロフォード」だったんですね~。また、ハングル外来語の落とし穴にはまってしまった。お恥ずかしい!さすが、ポクギさんです。ご教示本当にありがとうございました。
ソンジュ=ロシア=クロポトキンと勝手に連想していました~。早速、修正&追記させてもらいます。
啄木が夭折せずにいたら、1912年以降の時代をどう表現したのでしょうか。歴史に「たら・れば」は禁物ですが…。

『南朝鮮学生闘争史』届きました。マーケットプレイスは偉大ですね。解放後を主に叙述…といいながら、植民地期もかなり充実した内容になっているようですね。2・8のことを書こうと思っていたので参考になりそうです。重ねてありがとうございました!

トロツキー!うわう!

  • 投稿者: torako
  • 2007/12/21(金) 01:46:11
  • [編集]

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