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『再訳 朝鮮詩集』~お正月にしたいこと~

  • 2007/12/14(金) 00:00:00

先日、臨時収入があったので、某DVDと一緒にAmazonで金時鐘氏の労作『再訳 朝鮮詩集』(岩波書店)を購入しました。

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金素雲(1907~1981)の『朝鮮詩集』が岩波文庫に収録されたのは1954年、当初は1940年に『朝鮮詩集・乳色の雲』(河出書房)、続いて、1943年『朝鮮詩集「前期」「中期」』(興風館)として刊行され、戦後は1953年に創元社から出版されています。

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金素雲氏の訳詞は、金時鐘氏が前書きで述べておられるように「朝鮮の「詩心」といわれるものを精緻流麗な日本語で」表現している名作。
今回、金時鐘氏は『朝鮮詩集』に収録されている作品群の原詩をたどり、「対訳」という形で、自身の訳詞とハングルを併記しています。
また、『京城スキャンダル』と同時代を生きた40人以上の詩人の略歴も詳しく補足。以下引用です。

その多くは植民地朝鮮で不遇をかこった詩人たちであり、待ち望んだ「解放」を見ずして夭折した詩人。獄死した詩人。せっかくの「解放」に出会いながら、北朝鮮の特異にすぎる体制下で逼塞させられたあげく、韓国からも存在すら抹殺されてきた詩人。「解放」を境に事もなく、韓国での権威者に収まっていた元親日派の詩人、というよりも「親日」を掲げざるをえなかった詩人の誰彼。

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お正月は、金素雲氏の『朝鮮詩集』と、再訳、原詩を、林容澤氏の『金素雲「朝鮮詩集」の世界』も参考にしながら読み比べてみたいと思っています。

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金時鐘氏に感謝

土曜の仕事帰りの夕刻に「再訳 朝鮮詩集」を買いました。鄭芝溶の「故郷」の
  ポクギわが季節を謳ってはいても
  心は自分の故郷に抱かれることなく
  遠い港へと浮いていく雲。
という一節。たしかに金素雲の「朝鮮詩集」は、「訳詩というよりも、金素雲自身の、詩の歌」のようですね。
金時鐘氏は「忠実に原詩に迫ろうと」され、さらに対訳という形にすることで読者自身も原詩と格闘しながら詩のこころを読む場を提供してくださったようです。
金石範、金時鐘両氏の「なぜ書きつづけてきたか なぜ沈黙してきたか」は、買いそびれてしまいましたが、西村秀樹の「大阪で闘った朝鮮戦争」(岩波書店)のpp.186-206に、金時鐘氏にとっての済州島4.3蜂起の凄惨な情景の一端が、そして吹田事件における金時鐘氏が触れられています。
「再訳 朝鮮詩集」の漢字語(ハングル表記も含めて)を見ると、コリア語と日本語の間にあるぬきさしならない関係が垣間見え、さらに詩人たちの略歴、金時鐘氏の存在を通してわたしたちのありようそのものが照射される感じがするのです。

  • 投稿者: ポクギ
  • 2007/12/19(水) 02:00:38
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二人の詩心

ポクギさん
「ヴ・ナロード」のご教示、改めて、ありがとうございました。おかげさまでまた数日「歴史の断片」の中を漂うことができました(^^;)

『再訳 朝鮮詩集』お買いになられたのですね。この本も1939年と現代、朝鮮半島と日本とを分かちつつ繋ぐ「ぬきさしならない」内容を秘めていると思います。

12月8日に発売の、岩波の『世界』1月号に掲載されている、四方田犬彦氏の「翻訳の政治学に向けて 金時鐘の『朝鮮詩集』再訳を読む」を読みました。

四方田氏曰く、金素雲が選んだのは、植民地支配下、朝鮮語消滅の危機に臨んで、後世に向かってかつて朝鮮でも近代詩が執筆されていたという証拠を残すため「詩人たちが抱いていたポエジーを、言語という容器だけ替えて、日本語において保存すること」、また、一方、金時鐘氏がめざしたのは「朝鮮という観念をめぐって日本人が長年にわたり抱いてきた感傷をいかに歴史的なものとして埋葬し、日本人が他者として朝鮮語の詩に直面できるか」を提起すること…。

恥ずかしながら、ムン・キョンス氏の『韓国現代史』を読むまで、4・3事件のことはほとんど何も知らず、金時鐘氏の歩まれてきた道がどのようなものであったか、十分な理解にはほど遠いのですが、私も、2人の詩人と40人あまりの詩人の足跡と詩作を通じて、しばし、想いをめぐらすことができれば…。

  • 投稿者: torako
  • 2007/12/19(水) 13:18:57
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ようやく入手致しました

ハングルの原文も私には「猫に小判」ですし、ムズカシイ事はさっぱりわからない翻訳詩のミーハーファンにすぎませんが、外見も中身も美しい本なので撫で回してにやついてます。ついでに「朝鮮近代文学とナショナリズム」と「韓国アクターズ年鑑2008」も買ってしまいました。

  • 投稿者: 御所
  • 2007/12/26(水) 12:18:17
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ファイティン!御所さま

御所さま
こんばんは~お仕事のピークは過ぎましたか?
韓ドラ、いやさ、リュジン氏へのモチベーションは如何?
一御所ブログファンとして、気になるところでございます。

『再訳 朝鮮詩集』長く楽しめそうです。私は創作をする才能は皆無なので、自分の気分とインスパイアする作品を探すのがお正月の楽しみです。
「近代文学と…」若い研究者の方の意欲作のようですね。うむむ…またアマゾンに走ってしまいそう…。例のDVDBOXのⅡをまだ購入していないので、抱き合わせかしら。

ところで、昨夜(今晩?)の「京ス」ご覧になりましたか?
傾倒ブログが恥ずかしくなるほど、スカッと明るく楽しめました。

  • 投稿者: torako
  • 2007/12/27(木) 02:20:24
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年末謝恩ご挨拶

torakoさま、本当に楽しい半年でございました。心より御礼申し上げます。貴女のような才色兼備(のはず)の大和撫子に愛されたリュジン氏は果報者であります。あいにく私は、「京ス廃人同盟」の入会基準には達しておりませんが、「チーム・HIGHLYスヒョン」(仮称)創設の際には賛助会員として是非お仲間に加えてくださいませ。私としては「スヒョンを得て、リュジンを失う」という皮肉な結末(わはは)に乙女心を乱すはめになりましたが、さて来年は何か劇的な「反転」がありますでしょうか。
どうぞ良いお年をお迎え下さい。来年もよろしくお願い致します。
あ、豪華写真集、まだ届きません・・・

  • 投稿者: 御所
  • 2007/12/29(土) 12:38:53
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冬の月影 麗しの君

御所さま
丁寧なご挨拶、恐縮です。
「楽しい半年」と言っていただけると、嬉しいというよりも安心いたします。

露出度少なく、静かにお暮らしのスヒョン、いやリュジン氏を、小庵とはいえ、毎日露出させていて、いつかは罰があたらないかと、ドキドキしながらの偽装ライフ(ブログライフ)

細々と灯をともしていきますので、「アデュー・リュジナ」とおっしゃらずに、類い稀なる美質が30代後半にどう変化してくのか、生物学的興味も含めて、ウォッチングいたしましょう!
冬の月影もまた麗し。あぁ、豪華写真集…Ⅱを買わなくては…。

  • 投稿者: torako
  • 2007/12/29(土) 23:08:22
  • [編集]

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